愛猫 黒猫無垢の話 2
段ボールに入っていた黒毛玉をそっとつまんで持ち上げると、小さな黒丸から棒が5本、ひょろ~んと出てきました。
その棒の正体は足4本としっぽ。持ち上げられてびっくりしたのかひゃーひゃーと小さな鳴き声をあげました。
「・・ネコだ・・」
手の平でそっと包むように持ち観察すること30分。
小さすぎる、目もあいてない。 シッポどうした?折れてるけど。 生後何日なんだろう?そもそもなぜ猫がうちにいる?
いろいろな思いがグルグルと頭の中をかけめぐりました。
私の実家では、父が子供の頃から数多くの動物を飼っていました。
私の一番古い記憶では確か・・鶏、ガチョウ、雉がすでにいました。(昭和時代)
その後も金魚、犬、うさぎ、インコに九官鳥、虫も含めたらキリはないけれど、猫に関しては両親ともなんとなく毛嫌いしているような印象がありました。
実家があるところは二つの川が合流する田園地帯。人目もほとんどないからか捨て猫が多く、お腹を空かせた猫がよく町内に流れ着いていました。
そして家の中に侵入され、食べ物を盗られたり、飼っていたペットを食い殺されるという事態が多く発生していました。
雰囲気的にうちだけではなく、町内全体が猫を毛嫌いしていたような気がします。猫除けで犬を飼っている家も多かったし。
今では考えられませんが私自身も子供の頃は猫に恐怖心がありました。野良猫だからか目つきが険しかったし絶対近寄ってこないし威嚇もされていたので。
まさか大人になって猫にメロメロにされるなんて、ほんと先の事はわからないですね 笑
じっくり観察しすぎて寝るのを忘れていた私は、慌てて黒毛玉を段ボールに戻しました。
しばらくひゃーひゃー鳴いていましたが、眠ったのか静かになりました。
私はそっと離れて風呂に入り自室に向かいました。
いつもなら疲れでバタンキューと眠ってしまうのにその日はなかなか眠れませんでした。
しばらく自宅に動物がいない生活だったからか、家の中に猫がいるというだけでアドレナリンが大量に出ていたのかもしれません。
目を閉じても浮かぶのは黒毛玉となぜか蒲郡みかんの段ボール(インパクト強)
なんともいえないホワホワした気持ちに包まれながらいつの間にか寝落ちしていました。