愛猫 黒猫無垢の話 1
世間は日本のロイヤルファミリーの結婚式の話題で盛り上がっていた時代。
そんな幸せな話題とは無縁な、ただ家に帰って寝るだけの荒んだ生活をしていたその頃の私。
アルバイト先の人に「会社を設立するから手伝ってくれん?」と言われてうっかり「はい」と答えてしまったため、ひたすら仕事に忙殺される日々を送っていました。若かったからできたのでしょうね。今ならもう無理です。
その頃の事を言葉で表せと言われたら即答で「馬車馬生活」と答えます 笑
ただ、会社設立を手伝うというめったにできない経験ができたし、いろいろな出会いもあったし後悔はしていません。
その会社の事務所は自宅から遠く、現場に出る土・日以外はたいてい深夜の帰宅。
でも通勤・帰宅ラッシュとは無縁だったので、その点だけはとても快適でした。
確かその日も当たり前のように深夜の帰宅だったと思います。
いつもは居間の明かりをつけておいてくれるのに、この日はなぜか電気が消されて真っ暗でした。
『最近帰りが遅いから怒ってるのかな。すぐに風呂入って部屋に行って寝よう。』
一応反省らしきものをしながら居間に入ると、豆電球だけが灯されていました。
うっすらとした明るさの中、ぼんやりと浮かび上がったのは蒲郡みかんの段ボール箱。
この段ボール見覚えがある・・確かわたしが物心ついた頃から納戸のタンスの上に置きっぱなしだったやつだ。
あの古い段ボールが今なぜこのテーブルの上に置いてあるんだ??
怖い物見たさで恐る恐る段ボールをあけると、中には真っ白なバスタオルが敷き詰められていました。
そして真ん中にとても小さくて黒くて丸いものがぽつんと入っていました。
なんだこれ・・💧
これが私と愛猫無垢との出会いとなりました。