命名

愛猫 黒猫無垢の話 6

小さかった黒毛玉はすくすくと順調に育っていきました。

片手サイズから両手サイズになり、ヨタヨタフラフラしながらですが歩くように。

鳴き声もしっかりしてきて、玄関から離れた駐車場あたりにいてもひゃーひゃーと聞こえてくるほどになりました。

珍しく仕事が早く終わったので渋滞に巻き込まれながら自宅に帰ってくると、母が居間でTVを見ていました。

「おかえり、めずらしく早く帰ってこれたのね。」

膝の上には黒毛玉がいて、私の顔を見てひゃーひゃー(おかえりー)と鳴いていました。

私は急いで遅めの夕食をとり、居間に戻って母の近くに座りました。

「この子の名前決めた。無垢ちゃんよ、どう?」

突然、母が私にそう言ってきました。

「え?無垢?なんか犬っぽいけどなんで・・」

目の前のTV画面には、日本のロイヤルファミリーの結婚パレードの様子が流れていました。

あ~なるほど・・6月9日だから無垢かぁ。

この日がくるたびにテレビできっとなにかしら報道されるから年齢忘れなくていいね。

「無垢~君の名前は無垢だって。めでたくていいねぇ~」

母の膝にいた黒毛玉・・無垢を抱っこすると、ひゃーひゃーひゃーと大声でミルクの催促をしてきました。



無垢がうちに来た時は、あまりにも弱々しく生きられるかどうかわかりませんでした。

名前をつけてしまうと情がうつってしまう。万が一の時に別れがつらくなる。

だから家族は誰も名前をつけようとせず、クロとかチビとか黒毛玉とか好きなように呼んでいました。

成長して鳴き声がとても力強くなってきたため「生命力を感じられる。この様子ならもう大丈夫だろう」 と思った母は、ずっと名前を考えていたのだそうです。

そして、日本のロイヤルファミリーの結婚式という大変良き日のテレビ中継を見て「めでたい日にちなんだ名前にしよう」と日付から無垢と命名したのです。



無垢は6月9日が誕生日(命名記念日)となり、それから21年間生きました。 あんなに小さくて弱々しかったのにとても長生きしてくれました。

まだまだたくさんの思い出話があります。よろしければお付き合いください。