愛猫 黒猫無垢の話 9
いつものように仕事が終わった後のゴールデンタイム(無垢との戯れ)を満喫していた時でした。
無垢に指を甘噛みされた時に、少しチクッとしました。
『・・ん?なんかちょっと痛い?もしかして歯?』
この時は口の中をなかなか見せてくれなくて確認がとれませんでしたが、おそらく歯が生え始めていたのだと思います。
哺乳瓶の吸い口を何度か食い破られるようになって、ようやく無垢に歯が生えたと確信できた母と私。
『歯が生えたのならこれからはキャットフードでいいのかな。』
「いきなりは無理でしょ。人間の赤ちゃんみたいにまずはやわらかいものからよね。」
居間で晩酌をしながらテレビで相撲を見ていた父が突然大きな声を出しました。
「おーい!ささみ!ささみを持ってきてくれ!!」
何事!?と父のところにいくと、おつまみのささみの湯引きをうみゃうみゃうみゃ(名古屋弁)とうなりながらすごい勢いで食べている無垢ちゃんの姿が。
「膝の上に乗ってきてじっと見てきたからよ、食うか?って一切れ目の前に出したんだよ。そしたらいきなりバクッときてな。」
母が急いでささみを茹でで、細かくして持ってきました。
たっぷりささみを食べた無垢ちゃんは、満足そうにスヤスヤと眠ってしまいました。
母はこの時「最初にささみを与えたら今後もずっと鶏肉しか食べなくなるのでは」と焦ったそうです。
でも不思議なことに、無垢が人のおかずやつまみを食べたのはこの時のささみだけ。
たまに卵の黄身などを舐める事はあっても食べることはありませんでした。
次の日にはもうささみを口にしなくなったので、とりあえずキャットフードを買いに走りました。
カリカリを水でやわらかくすると無垢ちゃんはバクバクと食べ始めました。
その姿を見て母がほっとしたのは言うまでもありません。