かけがえのない存在

愛猫 黒猫無垢の話 18

今回は無垢が大人への階段をのぼっていた頃の話。

普段の私は平日は事務所で、土日祝は現場で仕事をしていました。

時々ですが平日でも現場に出る仕事があり、私はよくその仕事を引き受けていました。

現場仕事は終わる時間がしっかり決まっているのと、よほどの事がない限り直帰できるからです。 早く帰れれば無垢とたくさん遊べますからね。笑

あの日、私は現場仕事を済ませてうきうきな気分で帰宅しました。

『ただいまーー!無垢ちゃん遊ぼうかー・・ってあれ?』

いつもなら玄関で私を出迎えてくれる無垢の姿がありません。

まだ外の世界を知らない頃ですから、外にいるとは考えられませんでした。

首をかしげながら台所に行くと、両親はちょうど夕食をとっているところでした。

二人とも口数が少なく、なんだか元気がなさそうに見えました。

「あら、おかえり。今日は現場だったの?すぐ用意するから」と言う母。

両親の周りを見渡してもやはり無垢の姿はどこにもありません。

『無垢は・・?もしかして外に出ちゃったの?』

「無垢は病院だ。入院している」と父が言いました。

『えぇ!入院?』と驚く私。

「お父さん、もっと詳しく言わないとびっくりするでしょう?大丈夫、病気ではないのよ」と母。

突然いつもと違う鳴き方をするようになった無垢を心配した母が私の姉に相談をしたのです。

「それ、繁殖期が来た時の鳴き方だからそろそろ去勢しないと。病院で一度相談してみて。」と言われたのだそう。

父「病院に無垢を置いて帰るのがつらくてなぁ・・」

母「手術は評判のいい先生だから安心はしてるけど、さみしい思いをしてないか心配でねぇ・・」

私「せっかく早く帰れたから遊ぼうと思っていたのに・・でもいつかはしなきゃいけない事だもんね。」

その後も「大丈夫かな・・」「さみしくないかな」という会話とため息ばかり。

夕食後、両親は無垢の事を考えちゃうからと早々に寝室にいってしまいました。

私も一人で入るお風呂がさみしくてさみしくてたまりませんでした。

次の日は深夜に帰宅しましたが、無垢のお出迎えはありませんでした。

あれ?まだ病院にいるのかなと思ったのですが、朝には元気な姿を見せてくれました。

私にじゃれつく無垢を見て、父も母もニコニコしていました。

父「昨日、仕事が終わってすぐ迎えに行ってきたぞ。」

母「手術のあとだし慣れない場所にいたからかなり疲れてたみたいでね。帰ってきてから朝までずっと寝てたのよ。」

昨日はお通夜のような雰囲気だったのに、無垢がいるだけでむちゃくちゃ家の中が明るくなってる。

家にきて数ヶ月。無垢家族にとってかけがえのない存在になっていました。

私が結婚して家を出た時も無垢のおかげで寂しさを感じる事はなかったようです。

なかなか結婚しなくて心配かけてたから、寂しさよりもほっとした気持ちの方が強かったのでしょうね 笑